十二国記は、1991年より小野小野不由美さんが書いている中国風異世界を舞台にしたファンタジー小説です。今回は、阿選が絶対に天命を受けない理由について考えてみました。
物語のネタバレを考慮しておりませんので、続きが気になる人も安心してお読みください。
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【十二国記】阿選(あせん) 考察 阿選が絶対に「天命 」を受け得ない理由
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— 小野不由美「十二国記」/新潮社公式 (@12koku_shincho) March 12, 2020
阿選が絶対に「天命」を受けない理由があるとすれば、それは2つあると考えます。
2.「阿選」と字された生き方
驍宗は、泰麒によって選ばれ、実際に登極して泰王となります。阿選は王の資質を持っていなかったのかと問われれば、私は「王の資質は持っていた」と考えます。しかし、阿選は王には選ばれませんでした。
阿選は王に選ばれなかったのは、シリーズ作中で度々出てくる「王気」という麒麟にしかわからない何かです。
この王気というものについて、阿選が「阿選」と字された生き方から考察していきます。
【十二国記】阿選(あせん) 考察 事実関係の整理
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— 小野不由美「十二国記」/新潮社公式 (@12koku_shincho) March 2, 2020
第三巻の十三章には、阿選が過去を回顧する描写が多くあります。過去を整理しながら事実を整理していきたいと思います。
阿選と驍宗の二人が互いを認識するのは先王、驕王の時代になります。阿選と驍宗は、どちらも驕王の軍に入り功を上げ名を馳せます。阿選は、本姓を「朴 高」といいます。驍宗も本姓は同じ朴です。
「阿選」は、この時代に周りから揶揄を込めてつけられた字です。年齢で見た出世は驍宗の方が早いですが、驍宗が阿選と肩を並べた後は、二人は軍の双璧として戴を支えていきます。阿選は、驍宗を好敵手として見ています。
その阿選の心理に明確な違いが出たのは、ある驕王の出撃の宣旨を受けた後の行動でした。阿選と驍宗の行動やその時の阿選の感情について紹介します。
- 阿選の行動:先に宣旨を受けて実際に出撃し、功を上げて「一歩先んじた」と考えた
- 驍宗の行動:出撃を拒否し、再三の宣旨には軍を辞め、仙籍を返上して野にくだっていった
この時、阿選は
「身の置き所がないほどの羞恥を感じた。屈辱感、自己に対する嫌悪と怒り。」
「驍宗に対する憎悪が生まれた瞬間だった」
と思ったそうです。
この出来事が、阿選の心に、驍宗という存在を強くネガティブに焼き付け、驍宗が軍からいなくなってからも、そして軍に戻ってきてからも、阿選を悶々とさせ続けます。
さらに、この思いを誰の目にも明白な形で示したのが、驕王が斃れ、蓬山に昇山した驍宗が新たな泰麒に選ばれて登極し泰王となったことでしょう。驍宗は王となり、阿選は禁軍右将軍として麾下に入ります。
阿選と驍宗の間には、明確に立場の上下が生まれてしまったのです。これまではずっと多くの者から「選ばれたお方:阿選」でありながら、阿選は麒麟には選ばれなかったのです。
【十二国記】阿選(あせん) 考察 琅燦(ろうさん)の思わせぶりな発言
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数量限定ですのでお気をつけください。 pic.twitter.com/hJKvCfbh85— 小野不由美「十二国記」/新潮社公式 (@12koku_shincho) February 21, 2020
選ばれなかった阿選ですが、阿選には、驍宗の御代が短命に終わった場合には驍宗を乗り越える機会がある、という一縷の望みがありました。
そこに、そんな阿選を絶望に陥れる人物が現れます。琅燦(ろうさん)です。
本作第三巻の十三章で、琅燦(ろうさん)は阿選に次々と言葉を投げかけます。
阿選の望みに対しては、
「同姓の王が続くことはないんだ、知らないの?」
「天綱にこそ書かれてはいないけれど、天綱と同じように絶対」
と絶望させ、そのうえで、
「麒麟が選ぶのは、人でない、といったら」
「それで過ちが起こらないと言えるかな」
「驍宗様は昇山した。あんたは、しなかった」
「驍宗様のほうが、あんたより先に泰麒に会った」
と、本来なら阿選が王になる可能性があったかのように仄めかします。
ただ、「驍宗様は昇山した。あんたは、しなかった」という投げかけは、阿選という字がつけられた本質を指していると解釈できます。昇山をする・しないの1回限りのことではなく、自分でつかみ取るよりも、選ばれることで自己を確立・確認してきた阿選の生き方そのものに該当するのではないでしょうか?
【十二国記】阿選(あせん) 考察 その理由は既刊にヒントが!?
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— 小野不由美「十二国記」/新潮社公式 (@12koku_shincho) December 12, 2019
なぜ、琅燦(ろうさん)がこのようなことを仕組んだのか?それは、琅燦(ろうさん)の出自や言動から解釈することができます。
琅燦(ろうさん)は黄朱の民です。黄朱の民は、国を持たず、王と麒麟を持ちません。
既刊「図南の翼」において、黄朱の朱氏、頑丘という人物を通して黄朱という存在がどういうものか描かれています。
また、琅燦(ろうさん)自身も本作第三巻の十三章の中で
「王だの麒麟だのはどうでもいい」
と言っています。しかし、その一方で、王と麒麟に対して、
「興味は持っている、世の摂理として」
「私はこの世界と王の関係に興味があるんだ。何が起こればどうなるのか、それを知りたい」
「王と麒麟をめぐる摂理に興味はあるが、誰も答えは教えてくれないからね。知るためには試してみるしかないんだ。」
とも言っています。
これは、本作「白銀の墟 玄の月」を最終第四巻まで読み終えても、その本意が明確にはされない謎です。
【十二国記】阿選(あせん) 考察 思わせぶりは琅燦の他にもう一人
「十二国記新聞」号外を発行しました! 新作発売から社会現象となった数々の話題を、「十二国記」今年のニュースとしてまとめました。各書店にお届けしましたので、お近くの書店へお出掛けください。(なくなり次第終了となりますので、ご了承ください)#十二国記の日https://t.co/EWRBv90P5H pic.twitter.com/pe5DuM5Tsw
— 小野不由美「十二国記」/新潮社公式 (@12koku_shincho) December 12, 2019
阿選が王になれないことを主張する人物は、本作の中でもう一人います。耶利の主にあたる人物です。
こちらは四巻の最終盤で、泰麒が耶利に「耶利を遣わしてくれたのは、琅燦(ろうさん)ではないですか」と問いただす場面がありますが、耶利は返答しません。この2人は同一人物だとも考えられています。
同一人物だと、「麒麟はどうでもいいが、泰麒は守る」という部分もしっかりと解釈が必要ですね。
琅燦(ろうさん)は、王と麒麟はいるが治めてはいない国が民を幸福に導けるかを試したかったのではないでしょうか? そして、偽朝を運営させるために、王の資質は持っている阿選を選んだと考えられます。
ところが琅燦の想定通りにはいかず、阿選は機能せず、泰麒も蓬莱から還ってきてしまったことで驍宗と泰麒が治める天の摂理に戻すことが戴のためである、と考え方が変わっていったようです。
【十二国記】阿選(あせん) 考察 阿選(あせん) のTwitter民の評判
阿選についてTwitterの声を紹介します。
再び読んでみて、やっぱり阿選が驍宗に感じる感情は、嫉妬ではないと感じるなぁ
— かのこずり (@794sikademo) June 14, 2020
阿選さんは、ラヴェルの組曲「鏡」で。鏡を覗き込んだときに見えるものをイメージして作られたというエピソードが、阿選さんの鬱々とした心情と過去の純粋に驍宗さんと競いあっていた頃の楽しさを醸し出せそう。
— 小桃@十二国記 (@komomobk) June 14, 2020
驍宗が自分の上位互換と見做され、阿選は潰れた。同時代(7歳差)なら一発逆転の目はあるが、故人である偉大な前王に対しては絶対無理だし。 https://t.co/IObCQFkmL8
— Ys1k【しばらくテレワークメイン】 (@kanagawanowa1) June 14, 2020
驍宗様にとって 王とは到達点ではなく 民を救い 戴に安寧をもたらす為の手段でしかない
驍宗様の思考と行動の先には常に民の姿がある
阿選は驍宗と競うことが喜びで生きがいだったのだと思う
見つめる視線の先が交わることはない それを自覚して阿選は堕ちていく— ritsukoi711 (@32ritsukoi) June 13, 2020
【十二国記】阿選(あせん) 考察 絶対に「天命 」を受け得ない理由は?まとめ
冒頭で書いたように、阿選が「天命」を受けない理由の第一は、同時代に驍宗がいたからだと考えられます。そして、阿選が積み重ねてきた「阿選」と字された生き方。
阿選は、先んじて選ばれなければ、アイデンティティが保てないのでしょう。自分を選ばなかった相手には、存在を許せないくらい徹底的に非情になってしまう。麒麟が迎えに来て登極した王は数多くいますが、驍宗がいては、阿選には天命が与えられるチャンスはなかったと考えます。
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